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2012年5月13日 震災復興支援 日本復活と投資を語る義捐金セミナー
「未来を創る子供たちの為にいま出来ることを」
東日本に未曾有の被害をもたらした大震災から1年、日本はお互いを助け合う絆を確認し、復興と経済復活に向けて邁進しております。昨年5月14日、「必ずニッポンは立ち直り、世界に復権する」義捐金セミナーを実施しました。今年も志を共にするメンバーが集まり、日本経済・株式の今後の展望について改めて語り合いたいと考えております。
日 時 2012年5月13日(日)13:25~(13:00受付開始)
場 所 東京国立博物館 平成館大講堂
定 員 席数400席
参加費 無料 ※当日会場にて義捐金(1口3,000円)をお願いいたします。
義捐金は主催者を通じて全額「東日本大震災こども未来基金」に寄付いたします。
⇒お申込はこちらから http://minkabu.jp/top/news/489
<スケジュール>
13:00 受付開始
13:25~13:30 主催者あいさつ
13:30~13:40 「東日本大震災こども未来基金」ご協力の呼びかけ 高成田 享氏
13:40~14:10 講演(1) 澤上 篤人氏 「日本経済の展望と長期投資のすすめ」
14:10~14:40 講演(2) 武者 陵司氏 「金融危機からの生還、日本株投資チャンス」
14:40~14:50 休憩
14:50~15:20 講演(3) 鈴木 行生氏 「日本企業成長の息吹を見る」
15:20~15:50 講演(4) 髙松 一郎氏「投資最前線からの市場分析および投資テーマ」
15:50~16:00 休憩
16:00~16:45 質疑応答と討論 講演者ディスカッション
16:45 終了
決着ついた米国デフレ論争 ~ 日本病に陥らなかったアメリカ
株価は自明、米国が日本型のデフレに陥るか否かの議論の決着はついた。ユーロ危機は鎮静化、周囲への波及は遮断され、米国株式はバブル後の最高値を更新、2009年3月を底とした株価上昇のトレンドが継続している事が確認された。半年前、あれほど強かった米国が日本型のデフレに陥るという見方は、現実によって否定されたと言える。図表1に示すリーマンショック後の日米の極端な株価の乖離には、二つの仮説が可能であった。それは、①米国株上昇が偽り(→米国がデフレに陥り米国株も日本株の低迷に追随する)、②日本株の低迷が異常(→日本株がデフレ脱却により米国株高に追随)であったが、①が誤りであることが明らかとなりつつある。
この過程ではFRB(米連邦準備制度理事会)の創造的金融政策の貢献が決定的であった。伝統的、教科書的金融政策が踏襲されていたら、間違いなく大恐慌になっていただろう。しかもバーナンキ議長は、米国失業率は依然として高過ぎ、米経済の回復はまだ確実とは言えず、「勝利宣言するのはあまりにも時期尚早だ」と述べ、成長支援に向けた追加の選択肢を量的緩和(QE)の追加策を含め、どれも排除してはいないことを明らかにしている。 「最近のニュースは良かったが、われわれは慎重になり、これが持続可能なものとなるよう確実を期す必要がある」、FRBは「完全な回復軌道に乗ったと確信」できる状態ではまだないと説明している。
日銀はFRBの創造的金融政策QEの威力を学ぶべきである。しかるに躊躇している。4月9~10日に開かれた政策決定会合で追加緩和は見送られ、海外投資家が日銀の姿勢に疑問をもつこととなり、円安の流れがとん挫してしまった。円高・デフレへの回帰によりドイツ、米国がマイナスの実質金利になったのに比べ、日本のそれは高止まりし、更なる円高圧力になりかねない情勢である(図表2、3参照)。日本は腰を入れた金融緩和を対デフレ政策の基軸に据え、年初来の円安・株高のトレンドを確実にすることが強く求められている。
図表1:主要国株価推移(2009年3月=100)
図表2:主要国の対円為替レート推移(2007年1月=100)
日銀はFRBに真摯に学べ
4月9~10日に開かれた政策決定会合では追加緩和が見送られた。それに先立つ3月末、白川総裁はワシントンで金融緩和を長期間続けることの弊害を指摘した(「バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策は必要」としつつも、国際商品市況の上昇を引き起こすなど副作用に留意する必要を強調)。これらデフレ解消に消極的ともとれる一連の動きが、市場を疑心暗鬼にしている。現状は過剰なリスク回避によりマイナスのバブルが発生している局面なのに、プラスのバブルを心配するなど、日銀の対応はちぐはぐの批判を免れない。
もっとも西村清彦日銀副総裁は「経済学の教科書にはない新しいことをやっていく。金融論が新たに作られる時代だ」(『朝日新聞』3月23日)と述べ、米国に倣って創造的な未来志向の金融政策を志向していくと言明している。日銀内にもアメリカの成功に学ぶべきだとの議論が高まっていることが推察される。
日銀がFRBに学ぶべき創造的金融政策、QEのポイントは何かと言えば、それは直接金融時代にあった流動性供給と言うことに尽きるだろう。今や金融の主流が直接金融、資本市場を通した信用創造になっている以上、間接金融における銀行の融資促進だけに力点を置いていても効果は限られる。
そして直接金融市場での流動性増加とは、リスクプレミアムの引き下げ=金融資産価格の上昇に他ならない。バーナンキFRB議長は、今回の金融危機の際、「金融政策の最大の目的はリスクプレミアムを下げること」と何度も繰り返している。人々が恐怖にかられ適切なリスクテイクを放棄することで、金融市場が機能不全に陥ってしまうことを強く懸念するのである。人々が資本をすべて現金で持つようになれば、それは資本の究極の自己否定である。
図表3:日米独実質金利推移
図表4:日銀総資産推移
このプロセスでは、アニマルスピリットの喚起が決定的に重要である。アニマルスピリットとは、端的に言えば、より長期に対するコミットメントを強める心理である。人々は極端な不安心理に苛まれる時、当座に必須のものだけを購入する。しかしより自信が強まってくれば購買品目を、食料→衣料→家電→車→家具・住宅へと、より長期耐用分野にシフトさせる。また住宅も借り家から持ち家にシフトする。また企業は最小限の維持修繕投資から増産投資へ、新分野投資、長期耐用資産投資へとコミットメントを長期化させる。このようにして人々がより長期をにらんだ購買や投資をおこなうことにより、需要に厚みが生まれるのであるが、今の米国はかつて無く短期志向が強まり、需要が薄っぺらになっている。まさにアニマルスピリットが大きく損なわれているのである。アニマルスピリットとは投機心の促進というより、長期繁栄に対するコミットメントを強めることであり、それは長期株式投資の鼓舞と同義である。図表5、図表6は米国の実体経済と金融市場のアニマルスピリットを如実に示す指標だが、どちらも依然著しく低水準にある。
このように考えればQEの意義もはっきりする。バーナンキFRB議長はQE2導入の目的として、株価の値上がり期待に言及したが、それは決して射幸心をあおるものではなく、より長期に対するコミットメントを強めようとしたのである。そしてそうした観点から見れば、QE2は十分に意義があり、成功したといえる。また更に必要であれば、当然QE3が打ち出される。株価継続上昇、景気の持続回復が実現するまで、際限なく量的緩和が続く。インフレが封じ込められ、米国長期金利が抑制されている現状では、量的金融緩和の天井は高いと言える。
図表5:米国GDPに占める裁量的(=長期)支出の割合
図表6:米国株式のリスクプレミアム
日本病の根源、異常なリスク回避=日銀は全面的に責を負え
日本の諸悪の根源は円高デフレと言ってよい。デフレは借り手、リスクテイカーを懲罰し、資本主義の精神、アニマルスピリットを萎えさせる。またデフレは生産性上昇率格差をインフレで埋めることを困難にし、低生産性、内需セクターの停滞と賃金下落を引き起こす。つまり所得配分を歪め、格差を拡大させる。さらにデフレスライドの支給減が行われないために、年金受給者、公務員など非ビジネスセクターの相対所得を引き上げ、不公平を拡大する。「失われた20年」を特徴づけた円高・デフレの悪循環終焉は、日本の経済と市場の風景を根底的に変化させる可能性が強い。財政政策が機能不全に陥った今、日本のマクロ経済政策はひとえに日銀に握られていると言える。
日銀は円安とリスクプレミアムの引き下げに照準を絞るべきである。