2010年01月22日

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ストラテジーブレティン 第3号

リスクテイクに暗雲、金融制度変更、金融機関批判

3月以降顕著に上昇してきた世界の債券(クレジット)と株式市場に冷や水が浴びせられている。英国では金融機関の高額ボーナスに対する特別課税が、米国では金融機関に対する特別課税が打ち出されていたが、昨日はグラススティーガル法の実質復活を思わせる、新たな金融制度改革法案が明らかとなった。これら一連の動きが、これまで続いてきた積極的リスクテイク、株高、債券高の流れを押し止める可能性に留意するべきである。 特にオバマ政権による新金融制度改革案は、銀行の①自己勘定取引の制限、②ヘッジファンド・プライベートエクイティ兼営(投資)の禁止、③規模拡大の制限(預金シェア10%上限)、等であり、現在のグローバルホールセールバンキング(投資銀行)業務を阻害する可能性がある。想定された改革の幅の中で相当タカ派色が強いものであり、金融ビジネスの土俵を変えるマグニチュードを持つ。マサチューセッツ州の上院補選における民主党の敗北により、オバマ政権が大衆迎合的な懲罰色の強い政策にシフトしているとすれば、その波及効果は軽視できない。 危機制圧のために、当局は全力をあげて金融機関収益の復活と資本強化、リスクテイクの復元の後押しをしてきた。ここ一連の動きは、そうした「恵まれた保護の時期」の終焉を示唆している。中国人民銀行による預金準備率の引き上げなどもリスクテイク一服の雰囲気を助長している。制度改革議論の帰趨、超金融緩和からの出口、銀行の報酬やリスクテイクに対する批判など、懸念が一掃されるにはしばし時間かかるのではないか。 図表1:主要国株式(2009年3月末=100); 図表2:主要国株式(2009年11月末=100) 世界株式は昨年来の金融相場的局面を終えた可能性がある。もっとも米国経済と企業業績は引き続き着実な回復しトレンドにあると考える。早晩株式市場は好調な企業業績を織り込む業績相場に移行していくものと思われる。また日本株式は、①世界的金融相場の中で最も出遅れていたこと、②日本株式は世界景気に対する感応度が高いので、来るべき業績相場の恩恵を受けやすい、③世界的リスクテイクが持続するとすれば、ドル債務(ドルキャリー)に代わって円債務(円キャリー)が増加し円安が進展すると考えられること、等から相対的には良好なパフォーマンスを示すと思われる。 ;図表3: 米国社債のリスクプレミアム; 図表4:S&P500指数、米国長期金利、ドルレートの推移

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