世界金融市場は、米国の金融制度改革案(ボルカー・ルール)、ギリシャ危機、中国の金融調整などを口実とした、調整局面にある。しかしファンダメンタルズ面では、ことさら懸念すべき要素は現れていない。ことに日本株式は上昇相場の入り口にある可能性があるのではないか。大局を決める3要因、①米国経済、②為替レート、③日本のデフレ脱却、の3つに関して、関連指標の力強い動きが注目される。
①米国経済、ISM指数の急改善
2000年以降日本株式は米国経済動向と連動。米国経済を端的に代表するISM景気指数は2009年以降の急回復トレンド続く。意外なことに、日本株式は米国株式以上にISM指数との連動性が高い。図表1に見るごとく、現在日本株の回復は、ISM指数の回復に大きく遅れている。それは今後のキャッチアップの可能性を示唆する。ちなみに好調なGDP、ISMデータの発表に基づき、先週ドイツ銀行は2010年米国経済の見通しを3.6%から3.8%へと上方修正した。
②為替、円安と株高相関強い・・・米国経済回復が円安を誘導
図表2に見るように2004年以降、日本株式は円/ドルレートとほぼ完全に連動して動いてきた。2009年の日本株の出遅れは、110円から80円までの急激な円高(およびその結果としてのデフレ)により、もたらされたと言えよう。その円ドルレートはいよいよ大幅な円高の転機を迎えつつある、と見られる。円高の2要因が転換しつつある。1.日米短期金利差は底入れし、今後米国経済の回復により、逆転することが視野に入りつつある(図表3)。2.円投機ポジション(ネット)がマイナスに転じ始めた(図表4)。米国経済の本格回復を前提とすれば円安への大転換が起きる可能性が濃厚である。
③日本デフレ脱却、不動産価格に注目、依然デフレ継続だがリスクテイク復活の兆し
依然日本はデフレのさなかにある。しかし1.日銀の対デフレ姿勢の明確化、2.円高一服、に加えて、3.不動産価格の回復が見えてきた。不動産市場全般は依然停滞下にあるが、東京圏のマンション流通価格が上昇し始めた(図表5)。また物件によっては瞬間蒸発(出せば右から左へと売れていく)という(日経ビジネス2.1.2010)。2007年以降の新規供給の大幅減が主因だが、割安感、金融緩和とともにリスクテイク姿勢の変化が底流にあるとも考えられる。それは、2010年デフレ脱却の最初の兆しとなる可能性があるのではないか。