2014年09月10日

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ストラテジーブレティン 第124号

Don’t Fight BOJ、黒田氏の覚悟を信じよう

「中央銀行には逆らうな」、は株式投資の鉄則である。中央銀行は金融政策を通して流動性(金融資産の購買力)を制御し市場価格に大きな影響を及ぼすことができる。NY市場でDon’t fight the FEDと言われているのと同様に、日本では日銀のスタンスが市場価格に圧倒的影響力を持っている。

 

特にタイミングという点で中央銀行の判断が決定的である。1980年代以降日本株のバブルが続いていたが、それは1989年末まで破裂しなかった。なぜ日本株のバブル崩壊が1990年初頭から始まったのかと言えば、それは三重野日銀総裁がバブル潰しの流動性抑制に踏み切ったからであった。またなぜ2012年秋まで異常な株安(マイナスのバブル)と円高が続いたかと言えば、それは白川日銀総裁が円高と株安を容認してきたからである。2012年末からの円安株高への大転換は(安倍政権の誕生による)白川日銀政策の変更が確実に見通せるようになったからである。

 

有言実行の黒田日銀

それでは今の日銀は何を目指しているのか。それは「2%の物価上昇達成と経済の持続的拡大に責任を持つこと」に尽きる。2%インフレの達成が困難なら躊躇なく調整をする、というコミットメントは明確である。安倍新内閣のキャッチフレーズ「有言実行、実行実現」は黒田日銀総裁のモットーである。更に、黒田氏は「円安が望ましくないという考えは間違いであること、更なる2%消費税増税が望ましいこと」、を主張した。つまり「2015年10月に予定されている消費税率の現行の8%から10%への引き上げがなされない場合、政府の財政健全化の意思に疑念が生じ、(確率は低いものの)長期金利が急上昇する懸念があるので、増税実施が望ましい」と述べた。日銀総裁が財政マターに言及するというのは領空侵犯である、との批判は一理ある。しかしそれも「増税による景気と物価下振れのリスクは日銀が金融政策で対応する」というコミットメントと捉えるべきである。

 

2%追加増税を可能にする、第一の矢、第二の矢の第二弾は必至か

黒田日銀総裁までもが2%増税支持を言及していること、大多数のエコノミスト・学者が財政再建のための2%増税支持であることを考えると、増税停止、延期はもはや考えにくい。依然として潜在的にはアベノミクス反対派が多い現状では、増税延期、停止は危険である。景気不安により消費税の追加増税すらできないとなれば、アベノミクス失敗との悲観論が勢いづくのは確実である。それは市場心理を決定的に悪化させるだろう。「病は気から」のたとえのように、今までの日本は「デフレが続くという信念から現金預金保有→資本退蔵に陥り自己実現的にデフレに陥っていた」と言える。ここはデフレ心理の払しょくが決定的に大事な局面であり、これ以上の心理悪化を阻止するべきである。

 

ファンダメンタルズ面では、昨年後半からの景気回復趨勢は4月の消費税増税で途絶えた感がある。改訂された4~6月GDPは年率7.1%の大幅マイナス成長となり、消費税増税前の駆け込み需要の反動減からの回復の鈍さが現われた。加えて夏場の悪天候が消費に悪影響を与えている可能性もある。7~9月以降は消費税増税による一時的かく乱が消えることで成長軌道は復元されるだろうが、力不足は否めない。また円安と輸入物価上昇が止まったことでインフレ圧力が減衰始めている。日銀の2015年2%の物価目標達成は極めて困難な情勢にある。日銀も注目している東大の日時物価指数は6月以降下落幅が強まっている。

 

かくなる上は第一の矢、第二の矢の再構築によりアベミクスの勢いを取り戻し、増税を実施するしかない。第二弾の量的金融緩和(QQE2)、税収増による更なる補正予算の発動を柱に、年末から2015年前半の景況を大きく押し上げる必要がある。

 

後は心理次第である

以上の事情は日銀の追加金融緩和を必至のものとしている。①米国の力強さを増す循環的経済回復と超金融緩和の終焉・利上げが視野に入ってきたこと、②依然として超割安の日本株式バリュエーション、③好バリュエーションを支えている好業績、は確固とした円安、株高の土台を作っている。この状況で黒田日銀総裁は「私に任せろ」と言っているのだ。信じていいのではないか。

 

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