2010年03月24日

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ストラテジーブレティン 第10号

何故2010年日本株がベストなのか
~三大欠点が三大長所に~

金融危機後、日本は世界最悪のパフォーマンスに

2009年の金融危機以降、日本は経済成長率でも株価上昇率(金融危機のボトムからの回復率)においても世界最悪であった(図表1.2参照)。「失われた20年」で大きく格差をつけられた後の更なる落伍に直面し、内外で日本悲観論が蔓延するのも仕方がないのかもしれない。2009年のGDP成長率は米国-2.4%、ユーロ圏-4.0%に対して日本は-5.1%であった。また昨年3月のボトムから先週末までの一年間の株価指数上昇率(米ドルベースのダウ各国指数)は、日本は25%と世界最低であった。

日本を陥れた3大循環要因

しかし、結論を急いではいけない。「失われた20年」の日本の凋落は過去の過剰繁栄の反動という不可避的要素があったが、ここ1~2年間の日本の不振は全く別の要因が引き起こしていることを認識するべきである。金融危機以降の日本に不振をもたらした3大原因、①世界景気に最も敏感な日本の産業特性、②異常な円高、③最悪の日本株需給、はいずれも一過性、循環性のものであり、今年はすべて反転すると考えられる。つまり過去1~2年間の日本は不振であった故に、今後他国を出し抜く経済成長と株価上昇が可能であると思われる。今年は日本株にとって大いなる「ポジティブサプライズ」の年となるのではないか。

景気変動に最敏感の日本製品

何故日本は金融危機後の世界の中でも不振を極めたのであろうか。その第一は日本が国際分業上、最も景気変動に敏感な分野を担当しているからである。 ① 日本製品は高級品・高価格品であるから、金融危機で奢侈品・高級品の消費が激減したことのあおりをもろに受けた、 ② 日本は完成品生産をサムソン、ノキア、エイサーなどに譲りつつも、それらの海外メーカーが使用するハイテク素材・部品では圧倒的な強みを維持している。それらは川上製品であるために、在庫調整に影響されて減産幅がより大きくなった、 ③ 日本はハイテク・高付加価値の資本財に強く、その需要は金融パニックに襲われて、一時壊滅した、等による。 実際、図表3に見るように日本の工業生産は激減した。リーマンショック後、金融危機の震源地米国では生産が10数%の落ち込みとなったが、対岸の火事であったはずの日本の鉱工業生産は40%弱程の激減となった。それはひとえに上述の理由により、日本の生産が世界で一番景気変動に敏感であるためである。このことは世界経済が回復局面に入ると、日本はより大幅な回復力を見せることを示唆している。実際このところ半年間の生産増加ペースは、日本は群を抜いている。

金融危機で円高サイクルはピークに

第二の日本の不振の原因は、110円台から90円までの30%超の大幅な円高である。この間人民元は事実上のドルペッグであり、韓国ウォンはむしろ大幅に軟化したから、日本の価格競争力は大きく損なわれた。また円高は世界不況による価格下落の影響を倍加させ、日本での賃金下落圧力を強め、日本のデフレを再燃させた。この円高の主たる原因は、①金融危機のパニックで逃避通貨として一時的に円が使われたこと、②それまでの円ショートポジションの巻き戻し等、一過性の需給要因であった。従って危機が沈静化し、円ショートの巻き戻しが一巡すると事情は一変する。最近では逆に円ロングが溜まっていること、ドルキャリーから円キャリーへの転換により円ショートの圧力が高まっていること、など需給面では円安要因が高まっている。前回のブレティン(Vol.9、3/15/2010)で説明したとおり、今後購買力平価115円に向けての円安が進行する局面にあると考えられる。

日本株式需給は陰の極

第三の日本不振の要因は、株式需給である。日本株は徹底的に毛嫌いされ、世界の株式投資家は日本を素通りし、日本株を極端にアンダーウェイトした。昨年世界株高が金融相場の色彩が強い間、日本株は完全に見過ごされた。しかし景気が本格的に立ち上がれば、日本株は敏感に反応するはずである。

世界の投資賢者が見過ごしているもの

2010年世界の投資賢者は静かに日本株に注目し始めた。年初の外国人買い越し基調はその現れであろう。なぜ彼らは日本株に注目し始めているのだろうか。それは①世界経済に強気になったこと、②日本株式の割安さと、過小評価の結果としての著しいアンダーウェイトの修正が必要になったことによる。ただ彼らにおいても、上述の日本経済と企業業績の反発力の強さ、円安の可能性については、依然懐疑的である。仮に世界経済回復がより強まり、円安が定着したら、世界の投資賢者の対日投資は一段と弾みをつけるだろう。その時には同様に国内株式保有を抑えて(減らして)きた国内機関投資家、金融機関も態度を一変させるだろう。

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